NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法

兵庫県のペンネーム落ちこぼれがボツ続きの体験を赤裸々に綴ります。

ぼやき川柳を始めたきっかけ

二〇一三年のことだ。土曜午後三時台にNHKのラジオ第1を聞いていると奇妙な番組に出会った。男性アナウンサーがなぜかこてこての関西弁でしゃべっている。女性のアシスタントと交互に全国から寄せられた川柳を都道府県名、ペンネームとともに次々読み上げる。どうやらぼやくことを基本にしているらしい。そこへ女性の川柳作家の先生が適切かつ軽妙な解説を挟む。病気や老後、死といった深刻なテーマからご近所の下世話な話まで、和気藹々、三人がおそらくお腹をねじらせて笑い合っているのだ。途中、その日のお題に応じたリクエスト曲を聴取者の希望に沿って流す。五十分で読み上げられる川柳は100句ほどか。最終盤、「それでは今週のぼやき川柳大賞の発表です」と男性アナが宣言すると、大仰なファンファーレのあとに、都道府県名、ペンネームとともにさきほど読まれた作品が再度読み上げられる。「おめでとうございました」……三人のパラパラとした拍手が起きる。そして先生が来週のお題を二題出して番組は終わる。私は「この番組はいったい何だろう」と首をかしげた。それからもときどき聞くようになった。そしてある放送の時、一つの大賞受賞句に感銘を受けた。たしか若い女性の作品だった。何というお題だったかは忘れた。「少しだけ着飾って行く里帰り」というような句だった。上五は「ちょっとだけ」だったかもしれない。この句について先生はこう説明された。「たまに帰省するときに親を心配させてはいけないから普段より少し上等な服を着ますよね。でもあんまり派手なものを着て帰ると、それはそれで都会でどんな生活をしているんだろうと親御さんが心配するから子どもとしては少しだけ着飾って帰るんですよね」

聞き終えて私はちょっと涙ぐんだ。随分長いこと故郷の愛媛県に帰っていない。八十代になる両親は今日も田んぼに出て働いているだろうか。「川柳とはすごい文芸だな。何度口に出してもそのたびに感動する句というのがあるものだ。自分も川柳をやってみたい!」。そのとき痛切に思った。私も応募してみることにした。