NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法

兵庫県のペンネーム落ちこぼれがボツ続きの体験を赤裸々に綴ります。

冠句の会で「もしかして貴方が?!」

 ぼやき川柳でラジオに出たりしていると驚くようなことがたまにある。最初の驚きは二〇一六年秋ごろだったか、「冠句」の集まりで起きた。

冠句とは五七五の上五をあらかじめ決めておいて、残り中七、下五を個々人が付けてその出来栄えを競い合う遊びだ。私は一九九九年ごろから大阪の職場仲間の冠句の会に入って楽しんでいた。

冠句のルールの説明を少しすると、席亭(取りまとめ役)がたとえば「だらしない」というお題を出すとする。するとこの上五に続く中七下五を句会に集まったメンバーが出し合うのだ。たとえば「だらしない妻の化粧と太鼓腹」(落ちこぼれ)という作品を私が作ったとする。それを席亭のもとに持っていく。席亭は落ちこぼれという名前を伏せて紙に書く。他のメンバーの作品も席亭が名前を伏せてアトランダムに書いていく。句には番号が振ってあるだけだ。作品が一枚の紙に集まると、それをコピー。どの句の出来栄えがいいかをそれぞれが投票し合って、句会の出席者は自分が選んだ句を読み上げ、選ばれた句の作者はその場で名乗り出る。その後、席亭が集計して開票するシステムだ。もちろん自分の句を選ぶことは禁じ手だ。即刻退場となる。非常に民主的で恣意のない選句となる。選ぶ側は天地人45678910と10位まで順位をつけて選び、席亭に提出する。席亭は天位を10点、地位を5点、人位を3点、残り4位以下を1点として集計する。何人に選ばれたか、総得点はいくつかで大賞句、次点句などを決めて最後に発表。みんなで講評し合って表彰をする……。宴会の席にもなっているので酒が回った席亭が混乱して句会の場が大阪弁で言うところの「わや」になることもしばしばだ。簡単に言うとこんな遊びだ。

長くなってしまったが、その冠句の会に出たときにたまたま選ばれた私の句があったので、読み上げられた直後に「越智子惚でございます」と私が名乗り出ると、出席者の一人のご老人が、「あの~『兵庫県の落ちこぼれさん』というのはもしかして貴方ですか?」と尋ねられた。私は驚いた。「はい。私がその落ちこぼれです」。自分の名前が少なくとも関西で一部の人に知られていることを知った瞬間だった。「初めてです。自分のペンネームを知っている人にお会いしたのは」と、のけぞりながら答えた。

まあ大袈裟にいうほどのことでもない。身近にも「ぼやき川柳」を聞いている人がいたというだけのことだった。