リスナーに寄り添い20年 NHKラジオ「かんさい土曜ほっとタイム」
2015/06/06 大阪読売新聞 夕刊 4ページ
◎ええやん! かんさい
■SAT Pleasure プレジャー
◆高齢者ら 毎週便り2000通
NHK大阪放送局制作の土曜午後のラジオ番組「かんさい土曜ほっとタイム」(ラジオ第1、午後1時5分~同3時55分)が、20年目を迎えた。高齢者を中心に、全国のリスナーから毎週2000通以上の便りが届く人気番組。スタジオを訪ね、愛され続ける秘訣(ひけつ)を探った。
先月9日の生放送。「姫路城に行ってきましてね」。司会の元NHKアナウンサー・佐藤誠と、レギュラー出演(週替わり)のタレント・西川かの子が関西弁で会話を始めるとたちまち、なごやかな空気に包まれた。
1996年の開始当初は、主に東京制作で大阪発は月1回だった。11年前から全面的に大阪制作に移行。地方発の全国放送でこれほどの長寿番組は珍しいという。
午後1~2時台は週替わりで映画や関西の街、芸能、料理、旅などを紹介する情報コーナーと、旬のゲストによるトークの時間。
この回の旅情報は、開創1200年を迎えた高野山(和歌山県)の特集だった。小鳥がさえずる杉木立の参道、戦国大名の供養塔がある奥の院の厳かな雰囲気など、臨場感あふれるリポートに驚かされた。
3時台は、人気の「ぼやき川柳」。定年後の楽しみや配偶者への不満をユーモラスに表現した作品が多数、寄せられる。選者は川柳作家の大西泰世さん。毎回、80~90句の入選作が番組内で読まれ、うち「大賞」に選ばれた数句はファンファーレと共に再度、紹介される。「自由」「直す」のお題が出ていたこの週、千葉県の男性の投句「奔放に生き棺おけがせますぎる」などが大賞に輝いた。
ラジオは「作り手とリスナーの距離感が一対一。ぬくもりを伝えられる」と、司会の佐藤。「リスナーには一人暮らしの方も多い。仲間といる気持ちになってもらえるよう、自然体を心がけている」
生放送を取材してみて、高齢のリスナーを楽しませたいという思い、分かりやすく丁寧に伝える工夫を、随所に感じた。めまぐるしい現代社会にあって、リスナーに穏やかに寄り添うこのラジオ番組は、多くの高齢者の「心のオアシス」となっているのだろう。(横田加奈)
写真=司会の佐藤誠(右)、西川かの子(左)と川柳選者の大西泰世さん。ゆるやかな雰囲気だ(NHK大阪放送局で)