NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法

兵庫県のペンネーム落ちこぼれがボツ続きの体験を赤裸々に綴ります。

三度目の公開放送では大賞ならず

 2年3カ月ぶりにNHK大阪ホールで公開生放送があった。二〇一七年五月二十七日のことだ。この日、私は大賞になれなかった。自宅のラジオに予約録音を準備して出かけていったが、前回の公開録音で大賞に輝いてしまったこともあって、最大の目標を達成して次の目標を見失ってしまった五輪の金メダリストのようになっていた。お題は「ためらう」ともうひとつあった。前回同様、家族も名前を借りて往復はがきで入場整理券券をゲットし、妻と会場に乗り込んだのだが、いまひとつ緊張感が足りなかった。ゲスト・堀内孝雄さんの歌に聴き惚れていたらもう3時。「ぼやき川柳アワー」が始まった。全国から応募があった木曜日締め切りの50句がまず読み上げられ、曲に入ったところで「この会場から選ばれた人を言います」と佐藤アナ。ここで私の名前が呼ばれた。前回は公開録音だったので後で修正も利くかと思ったが、今日は生放送。「いい加減なことを発言すると放送事故になる」と肝に銘じた。私の番が来た。選ばれたのはお題「ためらう」で、「女子会に静かに呑めと言う勇気」という作品。佐藤アナが読み上げた瞬間、会場のウケが良くないのが肌で感じられた。笑いが少ない。一瞬で自分が浮いていることに気づいた。空気がビミョーとはこのことだった。ツカミですべってしまう売れない漫才師の気持ちがよく分かった。もう取り返しはつかない。そのなかでも聞かれるままに句の説明をし、受け答えをしなければならない。「大西先生、どうですか。この句は?」などと佐藤アナが必死で盛り上げようとしてくれている。返答に困ったのか、大西先生が会場の私に向かって尋ねた。「これは想像(で作った句)ですか?」。ほぼ図星なので顔がひきつるのが分かる。どう答えたものかと思った。「以前の放送で、佐藤アナが女子会が二つも行われている居酒屋に入ったらもううるさくて仕方がなかったとおっしゃっていたことを思い出して作りました……」。動揺して上ずった私の声は生放送で全国に流れた。負けたと思った。当然、大賞句には入らなかった。終了後、すごすごと谷町4丁目駅へ向かった。おけら街道だった。家に帰って録音を聴き直す気にもなれなかった。