NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法

兵庫県のペンネーム落ちこぼれがボツ続きの体験を赤裸々に綴ります。

老練な作家より庶民の方が入選しやすい

ニュースサイトや公募サイト、新聞や雑誌を開くと川柳募集の文字が目に飛び込んできます。第一生命が主催する「サラリーマン川柳」の募集があったり、オリックスグループが主催する「働くパパママ川柳」の募集があったりします。企業が自社製品の販売促進のため、商品を織り込んだ川柳を募集して賞金を出したり、地方自治体が町おこしとして地元の名産品や伝統行事に関する川柳を募集し、賞品を用意したりする昨今です。書店の川柳コーナーに行けば、思わずクスッと笑ってしまうような介護川柳を集めた本が並んでいたりもします。

募集広告を見て、皆さんはこういうふうに考えていないでしょうか。「一位の賞金は10万円か。ちょっとしたお小遣い稼ぎになるなあ。ぜひ応募してみたいなあ。でも自信がないなあ。はがき代63円もばかにならないし……」

一瞬、自分の晴れがましい受賞風景を思い描き、指を折りながら五七五を考えるものの、しだいに面倒くさくなってきて応募することなく締め切りが過ぎてしまう人が多いのではないでしょうか。

この募集は毎年、何万通もの応募があると聞くと「川柳の素人の自分にはやっぱり無理だ」と尻込みしてしまうのは自然な流れでしょう。しかしその「素人」というのが実は強みであることに気づいていただきたいと私は言いたいのです。川柳を作り慣れた作家、いわゆる手練れの計算された作品よりもずぶの素人の多少でこぼこ、ごつごつしていてこなれない印象を受ける一句の方が、選者の目に留まりやすいのです。理由は一つ、素人の作品の方が「斬新な切り口」だからです。老練な川柳作家の作品よりも高評価を受ける可能性がそこにあるのです。歴史上も江戸時代に「前句付け」と言って、「七七」のお題を出し、その前に付ける「五七五」を庶民に募って選者が選んだのが川柳の始まりです。お上に面従腹背する一介の庶民たちの社会風刺、言葉遊びが今につながっています。

昨今の川柳募集でも計算ずくであざとい作品を選者は求めていません。少々字余りであっても「あっ、そうか。こういう発想もあるのか!」と選者が思わず膝を打って感心するかどうかにかかっています。ごく一般の人の頭のほうが柔軟です。短かろうが長かろうがそれぞれがさまざまな人生経験を経て、色とりどりの実体験を持っています。それが訴求力のある川柳を作る起爆剤になるのです。老若男女を問いません。若い人にしかできない句、女性にしか作れない句というのもあります。そういう意味で素人にこそ川柳大賞を獲るチャンスがあるのです。