NHK「ぼやき川柳大賞」を獲る方法

兵庫県のペンネーム「落ちこぼれ」がボツ続きの体験を赤裸々に綴ります。

2度目の大賞! 記念品ははがき1枚

2025年11月7日、実に5年ぶりに大賞をいただいた。コロナ禍を経ての長い道のりだった。夜の「ラジオ深夜便」に「ぼやき川柳」が移行してから、大賞をいただくのはこれが2度目。昼の放送の頃と合わせると19回目の受賞となった。我ながら涙ぐましい努力をしたが、一向に結果を伴わず、一時は投句を忘れることさえあった。気が付くと水曜日午後7時を過ぎているのである。ふと我に返ってここまで堕落したかと情けなくなった。「ぼやき川柳に老後を賭ける」とまで意気込んでいた自分がこのていたらくとは……。さて、5年ぶりの受賞で驚いたことがある。それは記念品の変化である。以前ならNHK大阪放送局からA4判が入る茶封筒でクリアファイルとオリジナルボールペンと簡易の手帳、あるいはそれ以前ならハンカチタオル(どーもくんなど)が届いていた。ところが今回届いたのは、ただの速達はがき1枚だったのだ。「ただの」という言い方は失礼かもしれない。ちょっと凝ったはがきだった。それが写真のとおり。通信面には表彰状をはがきサイズに縮小して、大賞句と受賞を称える言葉、大西先生のお名前が書いてある。宛名面には「おめでとうございます。また投句してください」という意味のことを書いてある。いずれにしても記念品がただの(やっぱりそう書いてしまうなあ)はがき1枚になってしまっていたのだ。これは洒落?貧乏? 期待して待っていた側に相当の落胆をもたらすものだった。ラジオ業界が斜陽化したからだろうか、賞品にお金を回せなくなったからだろうか。いずれにしてもこれをわざわざ速達にした意味が分からない。経費節減が主眼なら普通郵便でいい。急いで届けることもなかったのではないか。さてぼやくのはこのへんまでにして、とりあえずいただけるものはありがたくいただくことにした。ちょうど百均で買ってあったフォトフレームがあった。透明で縁のないポストカード・タイプだ。それに入れて部屋に飾ると、にわかに喜びがあふれ出てきた。改めて家宝にしようと思った。

はがきの通信面は小さな表彰状になっていた。受賞句と受賞者名、大西先生の名前が印刷されている

 

速達で記念品のはがきが届いた。宛名面には「おめでとうございます」と祝辞が書いてある(宛て先と名前は加工)

ポストカードサイズの透明なフォトフレームにはがきを入れた。部屋に飾ると、なんだかサマになる。えもいわれぬ喜びもわいてきた



 

もしも私が代役に立った場合、どうなるか

昨年亡くなった名優・西田敏行さんの曲に「もしもピアノが弾けたなら」というのがあります。これにあやかって「もしも私が(ぼや川の)選者なら」について考えてみます。私淑する大西泰世先生がもしお風邪をめされてぼやき川柳の生放送を欠席せざるをえないとき、この私が代役としてNHK大阪放送局に参上してはどうかという不届きな発想(誠に僭越ながら)をつらつらと寝床で考える夜もあるわけです。そうなるといったいどうなるか……。まず午後2時には地下鉄・谷町四丁目の駅に着くことでしょう。NHK大阪放送局への道すがら緊張で手が冷たくなっているはずです。「今晩、僕は生放送に出る」。そう思うだけで心臓の鼓動が異常に速くなります。通用口の警備員さんに事情を話し、「実はきょう、ラジオ深夜便に急きょピンチヒッターとして出ることになりましたので入らせてください」と申し出ます。すると警備員さんは不審そうにしながらも現場に内線電話をかけた後、その許可をもらって招待者用のIDカード(そんなものがあるかどうか分かりませんが、たぶんそんなもの)を渡してくれて、私は通用口の扉にカードをピッと押しつけ、突破して入っていくのです。エレベーターに乗ると9階のボタンを押します。いかにも優秀そうなNHK職員さん2人が偶然同乗します。「ナベちゃん、今度の朝ドラ、評判いいんだってね」「そりゃそうさ。大阪放送局制作だからね」「ねこちゃんの演出だからまあハズレはないよ」「知ってるかい。富ちゃん、去年の張本人だから相当焼きもち焼いているらしいよ」などと、典型的な業界人の会話に包まれて、私はますます気持ちが上ずっていくことでしょう。どうやら乗ってきたのは渡辺さんと金子さんで、冷やかされているのは富田さんらしいことが分かります。さてスタジオのある9階に着きます。スタッフの河北さんがにこやかに私を迎えてくれます。「落ちこぼれさま、お待ちいたしておりました。このたびは突然のご指名、申し訳ありませんでした。ところで、落ちこぼれさん、最近入選が減っていらっしゃいますが、何か体調を崩されたとか、ご事情でもおありでしょうか。心配しておりました」「いえいえ、ただ実力がないだけです。昼の放送のころは内輪受けを狙って『朝ドラ』ネタで入選を狙ったこともありました。野球のピッチャーでいうと球を置きに行く投句だったのですが、このごろはそれも通用しません。正面突破を図るとなると私のような粗忽者ではなかなか……。去年の入選はわずか3回でしたよ。ワッハッハ」などと世間話をする。そのうち河北さんが「それはそうと、今週は1086通の応募がありまして、まあこの右手の箱を見てください」「あらー」「これがはがきによる応募分、こちらがファクスによる応募分、こちらがメールによる応募分、これは点字による応募分となっています」「メールによる応募がダントツに多いですね。はがきは85円になってからぐっと数が減りましたか」「まあ減りはしましたが、お年寄りが地方からこうして鉛筆書きで寄せてくださるのですよ」「こりゃあすごい」……。
てなわけで、私は1086通の全部に目を通すことになる。お題は「走る」。大西先生のように一読して右から左とはいかない。完成度の低いもの、笑えないもの、意味不明なもの、見覚えのあるような句、いかにも誰でも考えそうな句、事実報告になっているだけの句などが網膜を通り、脳に届く。じんわりと腋の下に汗が出る。「『面白いけど、NHKで放送してよいものかどうか』もしっかり考えて選んでくださいね」と河北さんが言う。確かにその視点は公共放送の生命線だ。放送コードギリギリを攻めてはいけない。NHKに「三笘の1ミリ」はあってはいけないのだと肝に銘じる。やがてへとへとになって目が充血してくる。一人で何句も書いて投句している人もおり、こんなにたくさん読めるか!という満腹感、食傷に苛まれる。それでも80句くらいに絞り込んで、あとは全国の常連さんを敢えて斬る(泣いて馬謖を斬る)ことにする。そうしないと毎週常連さんばかりの番組になってしまうからだ。「初めて投句します」とあればそれを優先したい。ラジオだから音だけでは伝えきれない川柳はやはり採用しにくい。同じ発想の句はどれか一つに絞り込む。とかなんとかしているうちにいよいよ午後11時が迫ってくる。ADさんが十指をこちらに見せながらカウントダウンに入る。5,4,3,2,1(最後の方は無言になり、手のひらをこちらに差し出して)キュー……。赤地に白のオンエアのランプがともる。ゆるやかな「ラジオ深夜便」のテーマ曲が流れる。メインキャスターの小野塚康之アナウンサーがきょうはこの冬でも最大級の寒波が近づいているとしゃべりはじめる。やがて「列島くらしのたより」で和歌山県那智勝浦町の女性と会話している。それもあっという間に終わる。グレンミラー・オーケストラの「イン・ザ・ムード」がかかる。青いテーブル。壁にはカレンダーと電波時計が掛かかっている。小野塚アナとは少し離れた位置に物音を立てないように座る。コロナ禍で2人が向き合うのはやめたようだ。自分に向けられたマイクの迫力に圧倒される。押尾コータローの「again……」が流れて、ついに「ぼやき川柳」の始まり始まり……。
小野塚「ぼやき川柳、ぼや川。人生の泣き笑い、ぼやきたい思いを川柳に込めてお寄せいただいています。選者で一緒に川柳を伝えていただくのは川柳作家の大西泰世さん!と言いたいところですが、大西先生は本日、風邪でお休みのため、代役としてリスナーを代表して兵庫県の落ちこぼれさんに来ていただきました」(パラパラと拍手。自らもたたいている)
落ちこぼれ「はじめまして。兵庫県の落ちこぼれと申します」(声が震える)
~ラジオだから分からないが、全国に「誰?それ……」という落胆のビミョーな空気が流れているのがわかる。
小野塚「落ちこぼれさんはぼやき川柳の大ファンだそうですね」
落ちこぼれ「はい。12年前から聴いております。もうやみつきになりました」
小野塚「句集の出版はありますか」
落ちこぼれ「いいえ、まだ一冊も出せていません」
小野塚「それはいけませんねえ。それでよく今日、お声がかかりましたね」
落ちこぼれ「いやあ、自分から売り込んだようなものでして。大西先生にもし何かがあったら私が代役を務めますと、はてなブログなどで日頃から売り込んでいたのです」
小野塚「ぼや川の応募は毎週されていますか」
落ちこぼれ「そりゃあ、欠かさず毎週しています。ボツばかりですけど」
小野塚「そういえば私も読み上げたことがあるような……。年に何回、入選しますか」
落ちこぼれ「多くて3回から4回ですね」
~ここでスタッフから「押しているので巻くように」というカンペが出る。
小野塚「えー、雑談もこのへんまでとしまして、今週のお題に参りましょう。今週は『走る』。車で走る、ジョギングで走るなどの走るです。投句はおととい水曜日に締め切らせていただいています。投句は自作未発表のものに限らせていただいております。今週は全国から1086通の応募がありました。さて私の方から参りましょう。埼玉県の吉田健康食品さん、『喧嘩して妻のハンドル乱暴に』『喧嘩して妻のハンドル乱暴に』」
落ちこぼれ「奥さんの日々の必死のやりくりがあってもなお、家計が火の車であることが影響しているのでしょうか」
小野塚「喧嘩したら急カーブでもないのに、いきなり曲がっておいおいというときもありますよね」
落ちこぼれ「石川県の毎日がずる休みさん、『犯人は待てと言われて待ちますか』『犯人は待てと言われて待ちますか』」
小野塚「そりゃあ、待つ人なんかいませんよね。何で待てって言うんでしょうねえ」
落ちこぼれ「短く言うには最適だからじゃないですか。追いかけながら『君はリンゴを万引きしたようだから、ちょっと立ち止まってそこで待って話をしようじゃないか』などと叫んでいると息が切れて追いつけませんから。短く『待て』。しかし、待ちませんよね」
やや間があって小野塚「あっ、今度は私の番ですね。神奈川県の苦労三昧さん、『バーゲンに走った妻が膝痛め』『バーゲンに走った妻が膝痛め』」
落ちこぼれ「バーゲンとオバチャン、これは切っても切れない縁にありますね。元気なオバチャンはたぶん小太りでしょうからときどき足に負担が来る。体重計を気にしながらも食べられるうちは私は大丈夫と開き直る傾向があります」
小野塚「佐々木朗希がドジャースへ行くことになりまして。肩、肘、膝、腰と全身を使って165キロを投げるわけですから朗希はバーゲンくらいでは膝を痛めませんよね」
落ちこぼれ「専属トレーナーがいるでしょうからねえ。オバチャンのトレーナーは旦那さんくらいでしょう」
…………てな感じで前半が終わる。
小野塚「それでは中休みの音楽としましょう。デビッド・サンボーンで『THE DREAM』」です」
曲が終わる。
小野塚「デビッド・サンボーンで『THE DREAM』でした。それではぼやき川柳、後半戦に参りましょう。本日のお題は『走る』です。きょうの選者は大西泰世さんの代役で兵庫県の落ちこぼれさんに来ていただいています。音楽の間にお話ししたのですが、落ちこぼれさんはずいぶんとあがり症だそうですね」
落ちこぼれ「緊張の夏、日本の夏と言いますから。でも苦手な人が自分の部屋から出ていくと手がポカポカに温かくなったりもします」
小野塚「……」
落ちこぼれ「あっ、すべりましたね。商品名を出してしまいました。『クイズ・ドレミファドン!』だったら、赤いバツマスクを着けさせられるところです。まずい! これも民放の話でした。こういうことが頻繁にあると、せっかくの代役を降ろされるということもありうるわけですか?」
小野塚「まあ、そもそもが代役ですから。旅の恥はかきすて! などと言いましてもNHKですから限度というものがあります。しかし今のところは大丈夫そうです。料理番組の後藤繁栄アナやお天気の南利幸さんのダジャレもかろうじてNHKでは放送されていますしね。しかし放送事故に発展することもありますからくれぐれも気をつけてくださいね」
落ちこぼれ「スポーツアナの大先輩、小野塚さんにそう言っていただくと心強い。一度阪神電車で目の前に座っておられたことがありました。覚えておられますか」
~ここでスタッフから「押しているので巻くように」というカンペが再び出る。
小野塚「冗談は顔だけにしてそろそろ参りましょう。刻一刻と句を読む時間がなくなっています。早く読めというメールが全国から届き始めました」
落ちこぼれ「東京都の田舎者根性さん、『走りきり還暦の坂まだ登る』『走りきり還暦の坂まだ登る』」
小野塚「還暦で会社勤めを終えてもまだ坂があるということですね」
落ちこぼれ「人生には三つの坂があると言いますよね。『上り坂』と『下り坂』と『まさか』。年金の支給が65歳からになって、僕はまさかと思いながら上り坂を登っています」
小野塚「私も少し登っています。ただし落ちこぼれさんよりはゆるやかな坂です」
……その後もどたばたが続く……
小野塚「それではこれで最後の句です。三重県瀬古利彦は永遠さん、『給水を渡し渡され完走し』『給水を渡し渡され完走し』」
落ちこぼれ「給水を取り損なうと隣から渡してくれるランナーがいますよね。あんなに長い距離を走りながらそんな余裕があることと、アスリートとしての心の広さに驚かされます。こと給水に限らず、夫婦関係もこんなものではないでしょうか」
小野塚「それでは今週のぼやき川柳大賞の発表です」。厳かにドラムロールの音が鳴り響く……。
落ちこぼれ「山形県の芋煮で満腹さん、『快楽と区別がつかぬ火の車』『快楽と区別がつかぬ火の車』」
小野塚「熊本県のすっとこどっこいさん、『師走にもどんと構えて校長に』『師走にもどんと構えて校長に』」
落ちこぼれ「鳥取県の九回ツーアウトさん、『これはまたお呼びじゃないと口走る』『これはまたお呼びじゃないと口走る』」
小野塚「以上3名の方が今週のぼやき川柳大賞でした! おめでとうございます。パチパチパチ(拍手がまばら)。どうでしたか、大西先生の代役だった兵庫県の落ちこぼれさん!」
落ちこぼれ「いやあ、難しいお題かと思ったんですが、みなさん上手につくってくださいました。選者冥利に尽きます」

小野塚「ところで落ちこぼれさんの句は入選しなかったように思いますが。またボツですか」

落ちこぼれ「はい、『お手盛り』批判を警戒しまして、あえてボツとさせていただきました」

小野塚「どんな句で応募されていたのか、ちょっと聞かせてくれませんか」

落ちこぼれ「そうこなくっちゃ。それではあえて発表しましょう。『パシリなら昔も今も堂に入り』『パシリなら昔も今も堂に入り』。どうですか?」

小野塚「言葉のかけようもありません。それでは落ちこぼれさん、来週のお題をお願いします」
落ちこぼれ「いいんですか? 僕が決めてしまって。来週は大西先生が戻ってこられますよ。それでは『付け焼き刃』でお願いします」
小野塚「来週14日のお題は企業面接などでとってつけたようにもっともらしいことを言う『付け焼き刃』、知りもしないのに知ったかぶりに振る舞う『付け焼き刃』です。投句は自作未発表のものに限ります。ファクス、番組のHPからのメール、点字、はがきでも受け付けています。ファクス番号は06・6937・6・・・、メールは12日水曜日の午後7時までに届くようにお送りください。はがきも水曜日までに届くようにお送りください。落ちこぼれさん、きょうはありがとうございました」
落ちこぼれ「いやあ、緊張しました。もうお声がかかることはないでしょうか。あっ、スタジオの外でスタッフのみなさんがうなずいておられます。きょうは大西先生の偉大さが身にしみて分かりました。まさに一期一会。リスナーのみなさま、本当にありがとうございましたあ!!」
小野塚「それではここで曲に参りましょう。1974年の中条きよしさんのヒット曲で、『うそ』」

 

  1.  

漸減する投句数について

このところ、「ぼやき川柳」への投句数が漸減しているという指摘があります。確かに「今週は1200通の応募がありました」とアナウンサーが言うことが多かったのに、900通台になる週も出てきました。私なりに原因を分析すると、①まずは郵便料金の値上げがあります。はがき1枚63円だったものが10月から85円になりました。ボツになるかもしれない投句に85円をかけるというのは庶民にとってたいへん勇気の要ることです。今年から年賀状をやめるという人も周りでは増えてきています。封書に至っては110円になりました。500mlのペットボトルの水が買えるほどの値段です。利用者が減る、人件費がかかる、輸送費がかさむことなどから郵便が「負のスパイラル」に陥ってこうなっているのでしょうが、とても残念なことです。②つぎに放送時間の遅さが挙げられます。午後11時台に放送される番組を「もしかして私の句が読まれるかもしれない」と緊張しながら聴いていると、(この入眠へのグッドタイミングを逃すと)安眠に入り込めなくなり、翌日に差し支える可能性があります。番組の主な聴取者である高齢者に限らず11時台というのは睡眠にとって大事な導入部なのです。③放送回の分かりにくさが三番目です。第一、第二、第三金曜日にぼやき川柳があり、第四金曜日にはないというのがネックになっています。毎週金曜日としてもらえればすっきりするのに、そこが実現していません。④聴き逃しサービスの普及で放送後一週間は聴けるという安心感から何となく聴き逃してしまって、あとから聴かないで終わってしまうということがあります。⑤お題が「ぼやく」ことにやや向かないときがあります。これは以前からそうなのですが、ポジティブなお題、たとえば「大笑い」「青空」「爽快」「生き甲斐」などだった場合、それを「ぼやき」に転化させるのにはコツが要ります。いかにもぼやきやすい「つまずく」「痛い」「悔しい」などとは対照的です。後者だとがぜん句が作りやすくなります。⑥やっぱり締め切りが水曜日午後7時ということも原因でしょうか。「投句はすでに水曜日に締め切っています」と言われると、今週も出し忘れたことに気づくしかありません。⑦あとは読まれる句(入選句)が「土曜ほっと」のころの半分以下になったことで当選確率が下がったため、「出しても無駄かな」という不戦敗の気分がリスナーに漂うようになったというのも理由の一つとしてあると思います。⑧先日、「土曜ほっと」時代の録音を聞き直してみましたが、「生放送中の現在も投句を受け付けています」という緊張感をはらみつつ、3人で鑑賞してざっくばらんに意見を言い合うという「鼎談」の形の方がはるかに面白かった。深夜の放送ではなかなかそうもいかないということも感じました。

NHK「ぼやき川柳」を以前のような土曜日午後3時台のまったりした時間帯に戻す運動をぜひとも進めたいところです。(力が入って、まるで総選挙の候補者のような口調になってきました)

オープニングテーマは押尾コータローの「again…」

​​​​​ぼやき川柳のオープニングテーマはアコースティックギタリスト、押尾コータローの「again…」という曲です。押尾は1968年大阪府吹田市生まれで現在56歳。本名は押尾光太郎。中学2年生のときからギターを弾き始め、大阪府立北淀高校を卒業しています。「again…」は2003年6月18日発売のセカンドアルバム「Dramatic」収録曲で、このアルバムの最後に収録されています。ボサノバタッチで、パーカッシブなメリハリのある曲です。作曲・演奏は押尾コータロー、アレンジャーは平倉信行です。原曲は4分23秒ありますが、番組ではその一部分を使っています。ジャンルでいえばインストゥルメンタルになります。ギターはナイロン弦ではなくスティール弦を使っています。メーカーでいえばマーチン、ギブソン、師匠・中川イサトに薦められて買ったグレーベンなどを使っているそうです。Wikipediaには「演奏スタイルはオープン・チューニングやスラップ奏法、タッピング奏法を駆使し、マイケル・ヘッジス、タック・アンドレスなど強烈な個性をもつアメリカのギタリストたちの影響を強く受けている。フィンガー・ピッキングというピックを使わず爪で演奏しているため、小指以外の爪をスカルプチュアで保護している」「2002年(平成14年) 東芝EMIからアルバム『STARTING POINT』によりメジャー・デビュー。モントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival)に初出演。以後、マイルス・デイヴィス以来となる2年以上の連続出演を果たす。アメリカ・ナラダレーベルからアルバム『STARTING POINT』により全米デビュー。音楽雑誌『ADLIB』でのニューエイジ部門賞受賞を翌2003年を含めて連続受賞」とあります。

筆者はテレビで井上陽水押尾コータローにギターの演奏を教わるシーンを見たことがあり、テクニックでは陽水をしのぐことに驚きました。また大阪城ホールで押尾の生演奏を聴いたこともあります。180センチの長身で体形はスリム。ギター一本で壮大な宇宙を表現していくような演奏でした。大阪出身者らしく聴衆に対するサービス精神も旺盛という好印象を持ちました。

ぼやき川柳大賞の秀逸作品

NHKラジオ深夜便のぼやき川柳のホームページでは、大賞を受賞した句を以下のように随時紹介してくれています。そのまま引用します。なるほど甲乙つけがたい名作ばかりです。およそ自分の頭からは永久に出てこないような作品群と言えます。「これは秀逸!」と思う句をまったくの独断で選んでみました。競馬の予想紙ふうに優先度の高い順に◎〇▲△としています。

ぼやき川柳大賞受賞句

2025年11月のぼやき川柳大賞

お題『煮る』(2025年11月7日)

「一夜明け夫婦げんかは煮こごりに」      兵庫県 落ちこぼれ

「美味(おい)しいが何の煮物か分からない」長崎県 縞原二郎

○「しゃぶしゃぶのような夫の風呂タイム」    北海道 宗谷岬とゆうちゃん

お題『コスモス』(2025年10月31日)

「コスモスが咲いて明日から回り道」     兵庫県 松村宏之

「コスモスのような私が何故(なぜ)もてぬ」広島県 みかど

「コスモスも内緒話が好きでした」      山形県 山寺

2025年10月のぼやき川柳大賞

お題『きのこ』(2025年10月17日)

「きのこ狩り見た目美人に手を出すな」静岡県 伊豆の三太郎 

「このキノコ君が食べたら僕も食う」  長崎県 そいバッテン

〇「松茸をいただきしばし鎖国する」   富山県 風の盆

お題『揺れる』(2025年10月10日)

▲「ガード下電車のたびに揺れる酒」     栃木県 那須

「グラグラと抜けそうな歯と引っ越す日」石川県 忍穂鞠

「品格はこんなことでは揺れません」    宮城県 仙石線

お題『おしゃれ』(2025年10月3日)

△「おしゃれする妻の背なには羽根がある」富山県 かぐや

「似合わない恋とセーター捨てました」  三重県 水谷裕子

「若者よ破けていると声かけた」     埼玉県 いなほ

 

2025年9月のぼやき川柳大賞

お題『すすき』(2025年9月19日)

「百歳の増えてうなづくすすきの穂」 山口県 うちでの小づち

十五夜はいつかとぼくに聞くすすき」茨城県 勇気百倍

「釣果なく父はすすきを持ち帰り」  滋賀県 谷口由子

お題『分ける』(2025年9月12日)

「カステラの厚みでわかる妻の愛」     宮城県 星良子

「血を分けた蚊がゆうゆうと飛んで行く」千葉県 浦賀奉行

「お裾分け値札がうまく剝がれない」    埼玉県 秋山佐代子

お題『芋』(2025年9月5日)

「ハンドルも焼き芋になるこの暑さ」愛媛県 松田正人

「焼きいもに手招きされて買う娘」 新潟県 桑原真琴

「妻の愚痴芋づる式にあの日まで」 埼玉県 鬼滅のバアバ

 

お題『流す』(2025年7月11日)

 

「汗水を湯水のように子が使う」  大阪府 安井秀美

 

「厚化粧なかったことにする暑さ」 群馬県 ヒグラシ

 

「散歩後にシャワーで汗を流す犬」兵庫県 中前田淑子 

 

お題『帽子』(2025年7月4日)

 

〇「麦わら帽かぶれば夏の扉あく」  愛知県 家田満理

 

◎「捨てられぬ無冠の父の登山帽」  東京都 日馬美樹

 

「アチコチでなくした帽子元気かな」東京都 練馬のひでちゃん

 

 

お題『変化』(2025年6月20日)

 

「変化ではなく老化だと教えられ」福岡県 二宮正博

 

▲「名刺見て言葉づかいが改まり」  東京都 多摩川勘助

 

〇「父の日も変化はなくてカップ麺」沖縄県 イリオモテヤマネコ

 

お題『にじむ』(2025年6月13日)

 

「星みると涙がにじむお父さん」        佐賀県 古舘寛子

 

◎「梅雨時は水琴窟になる我が家」        三重県 お百姓モーツァルト

 

「笑えない昭和が滲む(にじむ)親父(おやじ)ギャグ」埼玉県 尾上文夫

 

お題『傘』(2025年6月6日)

 

「案の定返ってこない金と傘」     宮城県 山口恭正

 

「折れた傘足りてないのかカルシウム」神奈川県  せきぼー

 

△「傘の花行列の先古古古米」      大阪府 角田弘子

 

お題『押す』(2025年5月9日)

◎「押し出しの立派な部下をもつ不幸」   奈良県 いさちゃん

◎「押し入れは見られたくない秘密基地」新潟県 ハイヒール

「女房にまわし取られて土俵際」     愛知県  三河の民

お題『子ども』(2025年5月2日)

「子供たち親孝行を節約し」    愛知県 山本佳子

〇「とりあえず電池切れまで動く孫」広島県

「中三の娘の部屋が遠いパパ」   佐賀県  西拓斗

お題『迎える』(2025年4月18日)

「一日をごくろうさまとお月さま」      岡山県 藤原健二

○「備蓄米迎えに行くよ何処(どこ)に居る」大阪府 村居英子

▲「いいわけを両手に下げて迎え撃つ」     愛媛県  ぐっちいかな

お題『りんご』(2025年4月11日)

「姫りんごきみは昔の妻のよう」     東京都  糖質無制限

「縁日で吸い寄せられるリンゴ飴(あめ)」熊本県 花より団子

○「リンゴ描き己の画力思い知る」     千葉県 高市良男

お題『便り』(2025年4月4日)

「酒もって早くおいでと桜から」   東京都 夜半亭あぶらー虫  

△「メールだとすぐに返事が来てしまう」沖縄県 南の海人

「亡き母の声まで聴こえるような文」 東京都 星の雫

お題『穏やか』(2025年3月20日)

「のどかとは奇数の月の老い2人」  埼玉県 橋本こん奈

「うちの嫁よりも穏やか仁王さま」  愛知県 友和

〇「穏やかに出来るもんかよこんな世で」大阪府 坂上

お題『菓子』(2025年3月14日)

「わが家でも中身が消える菓子金庫」  神奈川県 中平正和

「物価高まんじゅうだけがなぜやせる」岡山県 石黒敬子

▲「講演会マナーモードで食うせんべい」岩手県 桜井五郎

お題『桃』(2025年3月7日)

「玄関が暖かくなる桃の花」 奈良県 わかば

「桃太郎米騒動の鬼退治」  宮城県 小野里晃

「昼間から羨ましいぞ右大臣」愛知県 爺Gメン80

2025年2月のぼやき川柳大賞

お題『猫』(2025年2月21日)

「猫じゃらし俺に使うな俺は犬」  大阪府 山田哲雄

「猫飼ったつもりが猫に飼われてた」福岡県 橋口久美

お題『恋』(2025年2月14日)

〇「恋人の頃もあったと聞くイビキ」 千葉県 菜の花太郎

◎「恋敵負かしたことを後悔す」   徳島県 山西勝

「恋をしてウソが上手になりました」東京都 しげちゃん

お題『着る』(2025年2月7日)
「可愛い(かわいい)と孫に言われて着るピンク」大阪府 走るカラス
〇「留め袖がタンス預金の見張り番」        静岡県 望月文子
「妻笑うヒョウ柄を着てまた笑う」        大阪府 港区のヒロくん

2025年1月のぼやき川柳大賞

※1月17日の『ぼやき川柳』は、震災特番のためお休み

お題『チャンス』(2025年1月10日)
▲「おサイフを黄色に替えて寝正月」  茨城県 ゆき坊
「女神様ロングヘアーでいてほしい」 徳島県 とりりんご
◎「酌をして切り出すチャンス探り合う」三重県 ぼやせん娘

お題『祝う』(2025年1月3日)
「孫9人脛(すね)ボロボロのお正月」長崎県 井上純
〇「飲みたくてあちこち探す祝い事」  静岡県 我楽多
「定年を祝われ少し寂しい日」    愛知県 よか

 

お題『積む』(2024年12月20日)
「終電がオレのケーキを積んだまま」奈良県 あほらしやの鐘が鳴る
〇「経験は積んでもオレはこんなもん」京都府 野暮天・安
▲「あっちからこっちへ積んで大掃除」岐阜県 おかエリ

お題『白』(2024年12月13日)
「白い服今日は外食いたしません」 大阪府 大野千枝子
「獅子舞がホワイトニングして準備」香川県 柿沢菊子
◎「肩書が取れると白は白に見え」  奈良県 渡辺勇三

お題『セーター』(2024年12月6日)
「セーターにたっぷり妻の嘘(うそ)がある」愛知県 フーマー
〇「セーターを着ている方が社長です」    兵庫県 西宮淑子
◎「ペアルック憧れるのをやめましょう」   兵庫県 兵庫県のゆういち

 

お題『感謝』(2024年11月15日)
◎「感謝には特上上と並がある」    長野県 国道256号線
〇「ありがとうごめんなさいで世を渡る」福岡県 川浪康司
「手を合わす神棚よりもエアコンに」 大阪府 堺のマブジー

お題『旅』(2024年11月8日)
▲「外国語習いに行こか紅葉狩り」 愛媛県 さんごしょう
▲「旅に出る前から恥をかいている」静岡県 望月啓次
「果てしなく伸びる胃袋旅の常」 埼玉県 鈴木さな奈

お題『自慢』(2024年11月1日)
「宝くじ三億当たり自慢せず」    千葉県 田辺清
「自慢する話ある時電話くる」    東京都 吉田圭子
△「トロフィーの並んだ居間に通される」岩手県 ポテトサラダ

 

お題『隣』(2024年10月18日)
「雨模様(もよう)隣の布団どうしよう」長野県 宮沢久江
「隣から悪い自分がささやいた」    大阪府 脇田茂樹
◎「お隣も昭和を生きた枯れすすき」   岐阜県 キルト

お題『惜しい』(2024年10月11日)
「間に合わず不足を貼って出すハガキ」 北海道 浦川コピア
「ばあちゃんと呼んだ孫には金やらぬ」 岡山県原節子
◎「何回も片鱗(へんりん)を見せ定年に」佐賀県 牟田和彦

お題『柿』(2024年10月4日)
「鐘が鳴るどこかで柿を食べている」神奈川県 鳥毛義明
◎「来た嫁に渋抜きされた老二人」  福岡県 米村健藏
「柿のなる家の人とは友になる」  大阪府 ムーチン

 

お題『深い』(2024年9月20日)
「深すぎて分かってくれぬ僕の愛」愛知県 山﨑止水
〇「あれ以来深く帽子をかぶるクセ」静岡県 前田修一
◎「かさぶたをはがし古傷深くする」埼玉県 岡安節子

お題『月』(2024年9月13日)
▲「お月様二つに見えてお開きに」     千葉県 未咲
「通帳を見るにはやはり月明かり」    佐賀県 井上俊己
「徘徊(はいかい)の君をやさしく包む月」奈良県 やひろ

 

お題『ビール』(2024年8月16日)
「昼は水夜はビールを補給する」  山形県 日和
「無口でもビールはいつも聞き上手」岩手県 本田和
△「本物のビールを見ると身構える」 熊本県 つくるちゃん

お題『溶ける』(2024年8月9日)
〇「わだかまり溶けて食欲もりもりと」 東京都 西村捷敏
「初恋はかき氷より早く溶け」    神奈川県 さとっち
「君からの甘い誘いにでろんでろん」 千葉県 丑三深夜

お題『朝顔』(2024年8月2日)
朝顔におはよう今日が動き出す」   埼玉県 五十嵐静子
「ラジオ体操聞いて朝顔深呼吸」    埼玉県 橋本湧水
◎「朝顔に似てすぐ萎む(しぼむ)恋心」 東京都 本橋芳男

お題『キャンプ』(2024年7月19日)
「皆無口肉を忘れてきたキャンプ」   大阪府 末吉利次
「家庭でもキャンプみたいに動いてよ」 宮城県 たこにゃん
▲「ソロキャンプ友達いないわけじゃない」東京都 石井秀一

お題『冷やす』(2024年7月12日)
△「新札のブームを冷やすキャッシュレス」千葉県 山田明
「図書館へ枕を持って行きたいが」  埼玉県 曽田英夫
「お出かけに冷蔵庫からシャツを出す」京都府 小田部祐子

お題『うちわ』(2024年7月5日)
「電気代にうちわ使用を勧められ」       香川県 うどん人
「ゴキブリを叩いた(たたいた)うちわよこす妻」青森県 十和田仁
◎「かあさんの団扇(うちわ)の風に色があり」  東京都 小柳清治

お題『折る』(2024年6月21日)
◎「怒りには折れぬ心も涙には」  熊本県 ひつじが1匹
○「折り畳み式の胃袋持った妻」  熊本県 甲斐良一
◎「できるひとのみが味わう挫折感」岐阜県 高山浩

お題『箱』(2024年6月14日)
「薬箱恋煩い(わずらい)の薬まで」新潟県 佐渡おけさ
「化粧品ビックリ箱の中にある」  兵庫県 まねきねこ
〇「彼女来ずボックス席におれひとり」京都府 メタボの牛若丸

お題『しずく』(2024年6月7日)
◎「雨の日は水琴窟になるわが家」        京都府 不安心タイガース
「野菜高点滴みたいな豆ごはん」        京都府 吉岡正和
◎「監視されしずくのような醤油(しょうゆ)かけ」福井県 甘党

お題『勝つ』(2024年5月17日)
◎「負け組になったらできた真の友」 三重県 ウルトラの父
▲「愛は勝つ信じていても今ひとり」 山口県 夢香
「楽勝が風呂から出たらボロボロに」京都府 ぬいぐるみ班まきば

お題『体操』(2024年5月10日)
「新体操見れば爺(じい)ちゃん若返る」 神奈川県 扇畑の管理人
◎「恋ごころ準備体操せず動く」      東京都 汐海岬
「首体操してもお金は回らない」     大阪府 田原勝弘

お題『意見』(2024年5月3日)
「今はもう神のお告げになった妻」大阪府 太田省三
「全員の意見が違う孫4人」   大阪府 植田清夫
◎「俺の意見通った後の胸騒ぎ」  宮城県 大場敬

お題『散る』(2024年4月19日)
「サブちゃんが現れそうな花ふぶき」 兵庫県 壮年隊
〇「咲いて散り散っては咲いてまだ一人」高知県 高知モグラタロー
「海ガメの赤ちゃん海にいちもくさん」愛知県 にったみさ

お題『スミレ』(2024年4月12日)
「老いひとり道のスミレと立ち話」  埼玉県 五十代夏子
「一輪のスミレに気づく人でいて」  埼玉県 むかしおかし
「つまづいた先にスミレのあどけなさ」埼玉県 秋山和市

お題『やさしい』(2024年4月5日)
「さくら咲きやさしい散歩道になり」    大阪府 樋川眞一
〇「春の陽(ひ)が添い寝するので起きられず」静岡県 伊豆の三太郎
「優しいね減量中にモンブラン」      千葉県 ひよどりなおこ

お題『戻る』(2024年3月15日)
「会社からお昼を食べに来る夫」 岐阜県 川辺町子
「意気地なし三日で戻る元のさや」大阪府 安井秀美
△「成田離婚なのに戻らぬ祝い金」 岐阜県 恵那京子

お題『春』(2024年3月8日)
「大物の釣果は隣春の海」        奈良県 辰巳清治
〇「春だから逢(あ)いたい人に逢いにゆく」兵庫県 赤とんぼ
「春眠が片棒担ぎ遅刻する」       茨城県 藤郷正信

お題『出る』(2024年3月1日)
◎「出涸らし(でがらし)を俺に注いで茶葉換える」埼玉県 尾上文
「美人の湯美人になって出て来ます」        千葉県 舟橋八千代
▲「電話して彼女の父が出た昭和」          福島県 安達太郎

お題『近い』(2024年2月16日)
「炬燵(こたつ)から手が届かんのトイレだけ」大阪府 豊中のタカシ
「近づいて見たら全然別のもの」       新潟県 高橋敦子
「遠近法上手に使ういい夫婦」        福岡県 田島晋

お題『枝』(2024年2月9日)
◎「盆栽の枝をそぉっと糊(のり)で付け」大阪府 藤本欣久
「長電話枝から小枝話飛ぶ」      新潟県 あったらもん
「桃の枝飾れば雛(ひな)も頬染める」 愛知県 家田満理

お題『残す』(2024年2月2日)
〇「残すのは海老(えび)の尻尾と葬儀代」 広島県 おとといの干柿
▲「樟脳(しょうのう)も門出を祝う披露宴」埼玉県 ソフィア・ロージン
「結論は明日に残して酒にする」     大分県 大分市みやび

お題『大きい』(2024年1月19日)
△「観覧車だんだん空をでかくする」茨城県 民生
ほたるいか大王いかに育つかも」岐阜県 日比野勉
◎「世話焼きは世話焼きの人大嫌い」富山県 高岡一郎

お題『始める』(2024年1月12日)
〇「声高に始めひっそり終わる趣味」 神奈川県 山吹みどり
△「始まりのゴングはいつも妻鳴らす」東京都 茂田野マイ子
「女子会も静かにカニを食べ始め」 香川県 あかくまさん

お題『竜』(2024年1月5日)
「三日までやる気は龍(りゅう)のごとくなり」東京都 甘味処
「龍(りゅう)の背で世界平和のビラをまく」 静岡県 戸田ナオエ
「福袋竜の鱗(うろこ)も入れてあり」    大阪府 大阪のコーセー爺い

17年5月の公開生放送

2017年5月27日にあったかんさい土曜ほっとタイム公開生放送(@NHK大阪ホール)の本番前。往復はがきの抽選に当たった人たちが次々と入場してくる。年配者が多い。舞台上には出演者の席が設けられている。考えてみるととても安上がりな舞台だ

NHK大阪ホールの外の看板。この日のアシスタントは海原さおりさん、ゲストは浜村淳さんと堀内孝雄さんだった。お題は「家族」「ためらう」。筆者は「ためらう」で会場からの入選を果たした。「兵庫県の落ちこぼれさんはどちらにいらっしゃいますかあ?」という佐藤誠アナの呼びかけに手を挙げ、走って来たスタッフにマイクを向けられたが、佐藤アナが「女子会に静かに呑めと言う勇気」という筆者の句を2度読み上げると、会場内は水を打ったようにシーンとなった。まったくウケず、寒ぶー。取り返しがつかないほどすべっているのが手に取るように分かった。筆者はすっかりうろたえてしまって受け答えがちぐはぐになり、笑いは不発に終わった。ミョーな静まりを察知した佐藤アナが必死で会場を盛り上げてくれるのが痛いほど伝わってきた。おそらく1分余りの一連の出来事。生放送でそのまま全国に流れ、体じゅうに冷や汗が出た。帰宅後もラジカセの録音を聴き直す気にはなれなかった




「土曜ほっと」終了を嘆く声

「かんさい土曜ほっとタイム」終了を嘆く声をインターネット上に見つけました。精神科医をされている方だそうです。拝読してまったく同感。2019年3月ごろを強烈に思い出しました。ぜひ引用させてください。

新潟市医師会会報より

果たしてNHKに民意は届くか? 勝井丈美

3月初めからNHKに全国のシニア世代から、大ブーイングが寄せられている。そのわけは、23年間も続いた人気ラジオ番組『関西 土曜ホットタイム』(13時~16時)の3月16日終了が告げられたからだ。リスナーから1週間で500件もの抗議がNHKに寄せられており、「番組を復活しなければ、もう金輪際NHKラジオは聞きません」とか、「これしか生きがいのない病気の老人に、死ねというのですか」という過激なものも番組の中で紹介されている。特に大人気のコーナー『ぼやき川柳アワー』(15時~16時)だけは4月から深夜の時間に引越しになるが、それでも大ブーイングだ。先週の川柳のお題、『町』と『立つ』にからめて入選作の約半数近くが、番組終了への怒りや無念、悲嘆を表していたくらいだ。

実は、私も12年間、毎週土曜日、柏崎での仕事帰りにカーラジオで『ぼやせん』を聞くのを楽しみにしていた。『ぼやせん』の魅力は、思わず声をあげて笑ってしまう川柳の面白さもさることながら、佐藤 誠アナ、レギュラー川柳作家、中年女性タレントの3人が入選句を肴にくりひろげるユーモアあふれるしゃべくりにある。関西弁の抜け感が良く、楽しくてアッという間に1時間が過ぎてしまう。ままならない人生だが、このひと時だけは笑顔になれるというようなリスナーからのお便りも多かった。

佐藤アナは23年前から番組司会を務め、NHKを定年退職後も契約アナとしてやっていたのだが、前々から70歳での引退を決めていたのだそうだ。ただ、ご自身は後輩アナが番組を引き継いでくれるだろうと思っていたと番組の中で告白されていた。彼はまだ、現役バリバリ感があって、引退は早いと思うのだが、人には人それぞれの引退時期の決め方があるのだろう。

この番組をこよなく愛する全国のシニアからの悲痛な声を、NHK幹部はどのように受けとめるのであろうか。